道理にかなう=評価、とは限らない → 海の都の物語


マネー・ヘッタ・チャンのモノガタリ


むかしあったのか、最近あったのかというお話


バブルがすくすくと成長して、国中がマネーゲーム謳歌している時代にアホスギンチャンという若者がおりました
アホスギンチャンは歴史から学ぶ若者だったので、今回のバブルもいつか弾けると信じ、声を大にして狂乱のマネーゲームから降りるべきだと言ってまわりました。


彼はそれなりに仲間内に信頼があったので、幾人かの友人は彼を信じて、マネーゲームから降りました
またアホスギンチャンは野心もある男だったので、下げが来るとわかっているならと、空売りというマーケットが下がると利益になる賭けも同時に行いました。


ところが彼の予想に反して、バブルはなかなか潰れませんでした。いえむしろもっと巨大になったのです。
彼の言葉を信じた友人にはなじられ。自分の資産を突っ込んだ空売りでも大損してしまいました


そして、アホスギンチャンが大損して再起不能になった途端にバブルは破綻
彼の予想通りとなりましたが、誰もその予想で被害を避けることは出来ませんでしたとさ


めでたくなしめでたくなし


ギリシャ問題で先週は給料がヘッテルしつづけたマネー・ヘッタ・チャンです。


久しぶりに時間が出来たので、読書モノガタリをまた書いてみました
今回参考にしたのは「海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年」からの一節です


この本は、イタリアの小国家であったヴェネツィアが群雄割拠する諸国の中でいかに勃興し、衰退していったかを、あの塩野七生氏が全7冊にわたって書いた傑作です


歴史を学ぶことで、それを今に活かすことが出来ると思わせてくれる名作でした。
特に今回紹介するような、論理的に正しい事で袋だたきにされるってことも往々にしてあることを、知る意味でも非常に良い本でした


正しい知識、正しい行動も時期や関係性を逸してしまうと最悪の悪手となることがあるというお話でした


参考にした箇所
50頁 北アフリカ沿岸を航行中のヴェネツィア船が、ロードス高を本換地とする聖ヨハネ騎士団の船に襲われ、ロードス島に曳航されただけでなく、その船に乗客として乗船していたアラブ人十人が、奴隷として売られた事件である。


ヴェネツィア政府は、乗客の安全を保証するのは船長の義務であるとして、クレタ駐屯の艦隊に急ぎ出勤を命じた。そして、ロードス島の港の入口を埋めたヴェネツィア軍船の大砲が、港の城塞にぴたりと砲口を向けた中で、騎士団に、アラブ人を返すかそれとも戦いを交じえるか、とつめ寄ったのである。ヴェネツィア船が、乗客ともども返還されたのは言うまでもない。


しかし、不幸にして世間というものは、道理にかなうことさえしていれば評価してくれる、というわけにはいかない。このヴェネツィアのやり方は、キリスト教諸国から、利益の前には節操もなにもない異教徒べったりと非難され、地中海に出没する、異教徒撲滅を大義名分にした聖ヨハネ騎士団やフランスやスペインの海賊船に、ヴェネツィア商船襲撃の格好の理由を与えることになった。


軍用ガレー船の警護付きで航行するヴェネツィアの定期商船団は、海賊が本職の北アフリカイスラム教徒の襲撃に対すると同時に、同じキリスト教徒の船に対しても、商船ということがはっきりしないかぎり、簡単に船を横づけして儀礼訪問を交わすなどということは許されなかったのである。
抜粋ここまで
(注:紹介のため、改行や行間を一部訂正しています)


この本からの学び
不幸にして世間というものは、道理にかなうことさえしていれば評価してくれる、というわけにはいかない。また逆に道理にかなわなくても評価されることが世の中にはある