行動経済学を学ぼう ファスト&スローから

こんにちは、ヘッタチャンです。

今年のノーベル経済学賞行動経済学の権威であるリチャード・セイラー教授のだったので、読んでみたのがアマゾンで評判の良かったファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?庫 (上)(下)セット ダニエル カーネマン著です。

行動経済学は、投資メンタルにとてもかかわりがあるので、前からある程度のことは知っていたのですが、あらためて系統だって学んでみると投資家は全員勉強した方が良いと思うことがたくさんありました。

一部ですが、付箋を付けた部分とその感想をシェアしていこうと思います。

システム1の特徴    
・ 印象、感覚、傾向を形成する。システム2に承認されれば、これらは確信、態度、意志となる。    
・ 自動的かつ高速に機能する。努力はほとんど伴わない。主体的にコントロールする感覚はない。
・ 特定のパターンが感知(探索)されたときに注意するよう、システム2によってプログラム可能である。
・ 適切な訓練を積めば、専門技能を磨き、それに基づく反応や直感を形成できる。    
・ 連想記憶で活性化された観念の整合的なパターンを形成する。    
・ 認知が容易なとき、真実だと錯覚し、心地よく感じ、警戒を解く。    
・ 驚きの感覚を抱くことで、通常と異常を識別する。    
・ 因果関係や意志の存在を推定したり発明したりする。    
・ 両義性を無視したり、疑いを排除したりする。    
・ 信じたことを裏付けようとするバイアスがある(確証バイアス)。    
・ 感情的な印象ですべてを評価しようとする(ハロー効果)。    
・ 手元の情報だけを重視し、手元にないものを無視する(「自分の見たものがすべて」WYSIATI)。    
・ いくつかの項目について日常モニタリングを行う。    
・ セットとプロトタイプでカテゴリーを代表する。平均はできるが合計はできない。    
・ 異なる単位のレベル合わせができる(たとえば、大きさを音量で表す)。    
・ 意図する以上の情報処理を自動的に行う(メンタル・ショットガン)。    
・ 難しい質問を簡単な質問に置き換えることがある(ヒューリスティック質問)。    
・ 状態よりも変化に敏感である(プロスペクト理論)。*    
・ 低い確率に過大な重みをつける。*    
・ 感応度の逓減を示す(心理物理学)。*    
・ 利得より損失に強く反応する(損失回避)。*    
・ 関連する意思決定問題を狭くフレームし、個別に扱う

上記が何のことやらわからない方は(というか私もわかっていなかったのですが)、本書おすすめです、人間の本能的な癖がどれだけ日常を非合理的にすごさせてしまっているか、様々なケースで紹介しています。


少数の法則の背景には、標本サイズが小さくても抽出元の母集団とよく似ているのだからかまわない、という強力なバイアスも存在する。
このバイアスは、私たちが、自分が見たものの一貫性や整合性を誇張して考えやすいことに由来する。少ない観察例から導き出した「事実」に対する研究者の過剰な信頼は、ハロー効果とも深い関係がある。ハロー効果が働くと、実際にはほとんど知らない人のことをよく知っていると考えやすいからだ。
システム1は、断片的な情報を手がかりにリッチなイメージをこしらえ上げるという意味で、事実より先走っていると言えよう。結論に飛びつくこのマシンは、少数の法則を信じているようなふるまいをする。もう少し一般的に言えば、システム1は、現実以上に筋の通った現実像を作り上げる


イベント投資でもバリュー投資でも、その他さまざまなアノマリー投資でも、サンプル数が少ないにもかかわらず、投資判断の材料にしていることが私含め多々あります。投資判断において、その判断のサンプルは標本サイズが適正かを常に意識しなくてはと思いました。
(その点ではイベント投資や斎藤さんのシステムトレードは確かなサンプル数があるとも気づきました)


ホットハンドの誤謬は、バスケットボールに限らず、私たちの生活にさまざまな影響を与えている。たとえば何年儲けが続いたら、投資アドバイザーを凄腕だと認めていいだろうか。何件買収を成功させたら、取締役会はCEOがこの方面で有能だと評価していいだろうか。もしあなたが直感に従って答えるなら、ランダムな事象を系統的なものと誤解して、必ず誤りを犯すだろう。私たちは、人生で遭遇する大半のことはランダムであるという事実を、どうしても認めたくないのである


正しい投資法とたまたまの投資法を区別するのは難しいということ。私自身の成績もたまたまですから、よくわかります。

 

アンカリング効果は単なる研究対象ではない。現実の世界で相当な威力を発揮しうる。数年前に行われた実験では、本物の不動産仲介業者に、実際に売り出されている住宅の価格を見積もってもらった。彼らは物件を見に行き、売り手の提示価格などさまざまな情報が掲載された資料を入念に調べた。
しかしじつは、仲介業者の半数に見せた提示価格は正規のカタログに記載された価格よりかなり高めで、残り半数に見せた提示価格はかなり低めになっている。
こうして十分な調査をした後に、自分が買う場合の妥当な価格水準と、自分が売る場合に譲歩できる最低価格を言ってもらった。
その後、判断をする際に考慮した要素は何かという質問にも答えてもらったが、売り手の提示価格を挙げた人はいなかった。そんなものに左右されるのはプライドが許さない、というわけである。

彼らは、自分たちの見積もりは提示価格に一切左右されていないと言い張った。しかし実際には、大いに左右されていた。
仲介業者のアンカリング率は四一%に達したが、この数字は、不動産知識をまったく持っていないビジネススクールの学生とさして変わらない。学生たちのアンカリング率は四八%だった。両者のちがいは、学生たちはアンカーに影響されたことを認めたが、仲介業者は頑として認めなかったという点だけである


アンカリング効果というものは行動経済学でも特に学ぶべき効果の一つだと思います。
投資でいうと買値に売値におけるアンカリングはすさまじく、私含め多くの投資家は買値をアンカリングにして判断をしてしまいがちです。
例えば300円で買った銘柄が500円を付けて、また300円になってもアンカーとなっている300円が強く意識され、トントンだからよいやなどとなりがちです。500円で買ったなら450円で損きりしているのにアンカーのせいで、損切りがおろそかになったりします。


災害が起きると、被災者はもちろん、その周囲の人も、直後は非常に心配になるものである。たとえば大きな地震が起きるたびに、カリフォルニアの住民は積極的に保険に加入し、予防策や防衛手段を熱心に講じる。ボイラーを固定したり、洪水対策として一階のドアを防水仕様にしたり、防災用品を持ち出しやすいように整頓したりするわけだ。だが災害の記憶が時とともに薄らいでくると、心配や警戒心も薄れてくる。この記憶の変化が、災害→心配→油断というサイクルの繰り返しに表れる。こうしたサイクルは、大規模災害の研究者にとっておなじみのものだ


災害が起きたら、損保株と建設株他関連株買って、頃合いでドテン売りしろってことですね(笑)
実際ドテン売りはむずかしいのですが、このサイクルは永遠だと思います。


災害対策は、個人であれ政府であれ、実際に体験した最悪の事態を想定して設計される、ということである。エジプトのファラオ時代にも、毎年のように起きる河川の氾濫の最高水位が記録され、それに対する予防策が講じられていた。これは、過去の最高水位を上回る洪水は起きない、と前提されていることを意味する。最悪より悪い事態のイメージはなかなか思い浮かばないからだ


リーマンショックの前の投資家の最悪と、それを乗り越えた現在の投資家の最悪は、同じ最悪でも大分意味が違います。
リーマンショック前にバリュー投資で信用を使っていた方々の一部は最悪のイメージが過去の最高水位だったので、堅実だったはずなのに、流されてしまいました、



無価値の情報は、その情報がまったくないものとして扱わなければならない。この原則は、あなたもよく知っているはずだ。

ところが「自分の見たものがすべて」になるせいで、この原則を守ることは困難になる。受け取った情報をただちに却下する(たとえば情報提供者が嘘つきだとわかっている)のでない限り、あなたのシステム1は手元の情報を正しいものとして自動的に処理するからだ。情報の信頼性に疑念を抱いたときにあなたがすべきことはただ一つ──確率の見積もりを基準率に近づけることである。ただし、この原則を守るのは生易しいことではなく、自己監視と自己制御にかなりの努力を払わなければならない


無価値な情報を無価値とするのは、思った以上に難しいです。とくに近年は、SNSでの投稿に実際には意味がないものでも、値が大きく動いてしまうという形であればなおさらです。なにかを目に入れてしまった、聞いてしまった、それだけで判断がぶれるということは知っておくべきことでしょう。


人間観を変えるのは難しいことである。まして自分は思ったより下劣な人間だ、と考えを改めるのはますます難しい


これが一番心に刺さった文章の一つです。ほとんどの人は自分を過大評価しがちというのは、行動経済学以外の心理学でも実証されていることですが、いわんや投資で勝ち続けているときに自分の能力を適正に判断することなど、できるものでしょうか? 本当に気を付けなくてはと思う一文でした


ファスト&スローの紹介はもう少し続きますが、今日はこの辺で